天然痘と飢饉
あれは確か中学生の時だったと思う。
社会科で日本の歴史を学んでいたのだが、教科書にこんな文章があった。
「てんねんとうやききんで多くの人が亡くなった」
前半のひらがなを漢字表記にすると、
「天然痘や飢饉で多くの人が亡くなった」
ということである。
おそらく当時、中学校では習わない漢字だからひらがな表記だったのだろう。
しかし、当時の私はその文章を読んで、「てんねんとうやき菌」という病気で多くの人が亡くなったのだと理解していた。
そんなある日、テストでこんな問題が出た。
「この時代に多くの人が亡くなった原因を2つ書きなさい」
この問題を見て、私は思った。
「1つは『てんねんとうやき菌』のはずだが、もうひとつは何だ?」
教科書にはそれ以外に書いていなかったような・・・もしかしたら何か勘違いしてるのか?この問題は違う時代の話か?などといろいろな考えが頭をめぐり、嫌な汗をかいた。
正解はもちろん、「天然痘」と「飢饉」である。
しかし当時の私は、答えにたどり着けなかった。
教科書をちゃんと読んでおり、答えの書いてある文章を記憶していたにも関わらず、たどり着けなかったのである。
勘違い。思い込み。
この罠にはまると、自分では罠にはまっていることに気づかない。
このような罠は日常のいたるところに仕掛けられている。あなたもすでに罠にはまっているのかもしれない。
それに気づくのは今日か、もしくは数年後か。
いっそ気づかなければ幸せなのかもしれない。