ボールペンの意外な最期
ボールペンで紙に文字を書こうとしたら、インクがドバッと出た。
紙が汚れてしまったが、重要な書類というわけではないので、そこまで慌てることはない。とりあえずインクの付いたペン先をティッシュで拭いた。
気を取り直して、ボールペンを紙に当てて文字を書こうとしたのだが、今度はインクが出てこない。
おかしいなと思ってペン先を見ると、先端にあるはずのボールが無くなっていた。
ボールの無いボールペンはもはやボールペンではない。ただのペンだ。
いや、インクが出てこないのだから、ペンとしての役割を果たすことができない。つまりペンですらない。
私はその「ボールペンだったもの」を、しばらく呆然として見つめていた。
悲しい最期を迎えてしまった。
インクを使い切るのを寿命とするのなら、今回のは事故死ということになるのだろうか。
思えばこのボールペンでたくさんの文字を書いた。雨の日も風の日も。
感謝の念を胸に、お別れしよう。
ありがとう。さようなら。