朝のクモを逃がす
朝、部屋の壁にクモがいた。
朝のクモは殺してはいけない、という言葉を思い出し、外に逃がすことにした。
窓の方向にクモを歩かせようとしたのだが、思うように進まない。クモをコントロールするのは難しい。
クモを素手でつかむと潰してしまうかもしれないので、紙に乗せて外に連れて行こうと思ったのだが、うまく紙に乗ってくれない。
いろんな角度から紙を近づけて、どうにかクモを紙に乗せることができた。そっと外に出て、クモを逃した。
「朝のクモは縁起が良い」という話を聞いたことがあるが、その日、特別なことは無かった。
迷信なんてそんなものだ。
しかし、「特別なことが無かった」というのは、「悪いことが無かった」ということでもある。
特別に良いことは無かったが、平和な日常を過ごせた。それはそれで素晴らしいことだと思う。
平和な日常のありがたさを忘れずにいよう。