ベーコンポテトパンがカレーパンだった
その日、私はパン屋に行った。トレイとトングを持って店内を一周してから、ベーコンポテトパンとクロワッサンをトレイにのせた。会計をして帰宅し、袋からパンを出した。事件はその後起こった。
ベーコンポテトパンを一口かじると、それはカレーパンだった。
何が起こったのか一瞬わからなかった。しかし落ち着いてみれば簡単な話だ。私がベーコンポテトパンだと思って買ったパンが実はカレーパンだったというだけの話である。
店には確かに「ベーコンポテトパン」という表示があり、その場所から自分のトレイにパンを移したはずである。だが、ベーコンポテトパンの表示の横には「カレーパン」の表示があったように思う。
つまり、何らかの理由で国境を越えたカレーパンを、私がベーコンポテトパンの国で捕獲したのである。
「プラシーボ効果」というものがある。「有効成分が入っていない薬剤でも、効果があると信じて使用すれば効果がある」という現象である。
しかし、ベーコンポテトパンだと信じて食べたパンがカレーパンだった時、それはやはりカレーパンだった。
カレーパン、おいしかったからいいけど。
ちなみにクロワッサンはクロワッサンだった。それが普通だと言われればそうなのだが。
異常なことが起こると、普通がわかる。普通が普通であることに気づかないということは、異常なことが起きていない平和な状態だということかもしれない。