抜歯と抜糸はどちらも「ばっし」
歯を抜くことを抜歯(ばっし)という。
傷口を縫った後、糸を抜くことを抜糸(ばっし)という。
文字を見れば違いがわかるが、音声のみの会話では伝わりにくい。
「この前、親知らずを抜いたんです」
「そうなんだ」
「抜歯は痛いですね」
「そうだね」
「でも、抜糸は痛くないですね」
「え?抜歯は痛いけど、抜歯は痛くない?」
「はい」
「痛いけど痛くない・・・哲学的な話?」
「哲学?いや、どちらかというと医学の話ですが」
「医学?麻酔が効くから大丈夫ってこと?」
「まあ、そういうことなんですかね」
「ふーん」
このように、誤解を招くおそれがある。
とは言え、ここまで噛み合わないのも珍しいだろう。一般的には、
「歯を抜くのは痛いけど、縫った糸を抜くのは痛くないということです」
「ああ、そっちの『ばっし』か」
というようなやりとりがあって解決するだろう。
言葉をつかう時は、相手にちゃんと伝わるように意識しなければならない。
伝わらない言葉はただの雑音である。
まあ、そう簡単には伝わらないんだがな。
他人は他人。自分ではない。